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(2005-09-02)
作家の秘めやかな部分
筆者江藤淳氏には、戦後日本の言語をめぐる状況、文学論、氏の個人的体験などをめぐる多くの著作がある。それらの著作のなかでも、本書の犬についてのエセーには、氏の内にある柔らかな、そして優しい部分が自然と流れ出ているように思われる。それは、まさしく氏が本書において、「犬とはプライヴァシイに属している」と語っていることと等価であろう。氏は犬を語るという形をとりつつ、その実、自身の内奥の感性に自然にかたらせているのである。
私たちが「評論家江藤淳」について思い出すとき、その多くは、鋭い論客としてのそれであろう。しかし、本書はそのような氏の背後にある秘めやかな一面をのぞかせており、氏の人間としての全体像をうかがわせるという意味でも、興味深い。