ウルフィーからの手紙
アメリカ陸軍の兵士としてベトナムに行った兄さんが、手紙で軍用犬を必要としていると伝えてきた。ぼくはジャーマンシェパードのウルフィーを差し出すことに決めた。やがて戦場から手紙が届き始めた。「ウルフィー」の名で…。今なお戦火の絶えない世界に問う哀切な物語
パティ シャーロック (著), Patti Sherlock (原著), 滝沢 岩雄 (翻訳)
単行本; 350p; 19x13.8cm
評論社(2006-12)
¥ 1,785 (税込)
Amazon.co.jp カスタマーレビュー(1件)
おすすめ度
(2007-04-15)
「戦争」について考えさせる一冊
ベトナム戦争の時代、「愛国心」と人気者だった兄への対抗心から愛犬を軍に提供してしまった少年と周囲のさまざまな人間模様を描いた一冊。
主人公のマーク少年の周囲にはいろんな人がいて、それぞれベトナム戦争に対していろんな評価を持っています。主人公のマーク少年は周囲の人間との討論を通じ、悩みながらも自分の愛犬を軍から取り戻すための闘いに起ちます。その過程を翻訳者の滝沢岩雄さんはあとがきで「アメリカンデモクラシーの論理とパトリオティズムの心情の間を行き来しながらジグザグに進み、(中略)表現の自由、政府への抵抗権という民主主義の原理をそのつど自分のものにいていくのです」と言っています。
この物語がすばらしいのは、主人公が自分の頭で思考し行動していく過程がしっかりと描かれていることです。一個人は国家に従属しているものなのではなく自立しているということ、このことは今日もなお一人ひとりに問われる問題であると言えます。ましてや国家の発動する戦争においてはなおさら戦争に対する一人ひとりの態度が問われます。戦時においては、国家権力は平時とは比べ物にならない権力を行使して動員・徴発をかけるからです。まさに、「戦争」のときにとるべき態度について考えさせる一冊であると思います。
この物語にも限界はあります。軍にとっては所詮「装備」に過ぎなかった愛犬の行く末は気になっても、当のベトナムの民衆の苦難には想像力が及ばない主人公の想像力の限界です。その点だけは読者一人ひとりの想像力にまかせるしかありません。
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