ドリームボックス―殺されてゆくペットたち

ペットブームの裏側で、年間およそ40万頭の犬猫が見捨てられ、「ドリームボックス」と呼ばれる殺処装置に送られている。「ペット大国」ニッポンの現実を描く
小林 照幸
単行本; 207p; 18.8x13.6cm
毎日新聞社(2006-06)
ドリームボックス―殺されてゆくペットたち  表紙
¥ 1,680 (税込)
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Amazon.co.jp カスタマーレビュー(5件)
おすすめ度5(2008-06-03)
処分施設で働く人の苦悩を冷静に描く
作者の小林照幸さんは大宅賞というノンフィクションの賞を取った、ノンフィクション作家。
ただ、今回の「ドリームボックス」は特定の地区の愛護センターや特定の人物を書いた訳ではなく、主人公は架空の人物。
でも、とても丁寧に取材がなされていて、真実に限りなく近い事は良くわかる。

実は、初めの20ページは凄く泣いたのだけど、読み終わってみると思ったより冷静だった。
なぜなら、主人公のをはじめ愛護センターに勤務する人々が葛藤しながらも冷静なのだ。
怒り、憤り、悲しみながらも、業務を淡々とこなさざるをえない現実。
それが、感情的になりすぎず、「泣かせよう」としすぎず、しっかりと現実を見つめて書かれているのだ。
だから、号泣はしなかった。でも、号泣より重いものを受け止めた。

愛護センターに勤務する人たちも、夢を持って動物を助けたくて獣医になったり、薬剤師になったりした人だって多いのだ。
それがなぜ「殺処分」の業務を行わなければならないか?あまりの苦痛にやめていく人も多いと聞く。そうでない人は、淡々とこなすしかないのかもしれない。
悪いのは彼らではない。勿論、法整備や行政(もっとトップ方の)に問題は沢山あるけど、実際辛い業務をせざるを得ない彼らが悪いのではない。
なのに、「愛護センターというくせに、殺しているとは何事だ」と彼らに苦情が始終来るらしい。
その繰り返しでは、センターの担当者が心を閉ざしてしまっても仕方ないかも。

悪いのは、自分の手を汚さずに捨てる人間だ。
作品では、ペットブームの裏、犬種の流行、安易な繁殖、避妊、去勢、ペットショップの問題、教育、マイクロチップについてまで、
勿論行政の問題も、広くペット事情を取り巻く現実が冷静に語られていて、かなり評価できる。感情的になりすぎていないのが、かえって良い。


おすすめ度4(2008-01-11)
ペットブームの闇。年間約40万匹が殺処分されている現実
「著者あとがき」を読むと、動物愛護センター等を取材して書いた小説のようだ。小説だと頭では理解しても、
以下の箇所では涙した。

 残る三頭は母犬と共に市内の中学校の校門前に、段ボール箱に入れられて、置き去りにされていた。(略)
 子犬は母乳で育てられていたものの、一週間近くも水も餌も取れなかったと思われる母犬の衰弱は激しかった。(略)
 わが子は無事に救われた、とあたかも感じたかのように、母犬は三頭をそれぞれ舌で舐めてから息を引き取った。

一方、動物愛護センターに犬を引き取りに来た家族が、引き取りにきたはずの自分たちが捨てた犬ではなく、
隣の檻にいた「ダルメシアンを飼いたい」と言い出し、それを拒否されると捨てた犬を引き取りもせず、
職員の対応に怒って帰っていく場面には、体が震えるほどの怒りを感じた。

確かにペットショップに並ぶ犬や猫を見れば「かわいい」と思う。しかし、
命に値段を付け、車などのように物として売買するのは正しい行為だろうか。
ブームになった犬もブームが過ぎれば、まるで物を捨てるかのように捨てられ、
動物愛護センターで殺処分されている。
この事実を知れば、ペットショップで動物を買う行為を見直す必要があるのではないだろうか。

無責任に飼い主に捨てられた年間40万匹もの犬や猫が苦しみながら死んでいる。
飼い主ひとりひとりが「飼い主の責任」を果たし、またペットを飼っていなくても
一人でも多くの人がこの現実を知り、殺処分される犬や猫を減らす努力をしていく必要があると感じた。


おすすめ度5(2007-10-01)
抜本的解決を求む
著者の「全盲の弁護士 竹下義樹」にも感銘をうけた。
小林 照幸なる人は陽と陰なら陰と思われている立場に視線を向ける人なのだろう。
この著者や著書に賛否はあるだろうが、本書ともども一定の敬意は表したい。
ただ本書もそうだが、捨てられる動物の問題に対して抜本的な提言がやや少ない。
問題を投げかけるだけでは「足らない」のだ。
「著者なり」のもっと具体的な愛護・保護手段を掲載することはこういう本には必要だと思う。
本書のような内容の本は他にもいくつかある。
しかし気づけば、読むのは犬好きネコ好き動物好きな人であって、動物を捨てる人は決して読まない。
まるでそれはテレビを見ない人にテレビで「テレビを見てください」と言ってるのと同じで、効果がない。
だから動物捨ての問題はなんら進展しないのだ。
まず行政(国家)が家族に犬ネコを迎える場合の法令での要件を早期に備えるべきだ。
・チップを挿入する(保全手段として)
・本書のようななんらかの捨て犬ネコ問題の書物を指定して購入を義務づける
・飼育登録時に動物救助資金を徴収する
などなど、、、。
それが出来ない、または、拒否する、というなら飼育を認めなければいい。
少なくとも捨てられる生きものたちを減らす方向は示せると思う。




おすすめ度4(2007-01-16)
読んでも重いものがずーっと残りますね
読んで反射的に感じたことが日本人への嫌悪感。生命や死に対する近視眼的でセンチメンタルでナイーブ
な考えというか、ペットに対して極端に振れてしまう感性に対して。無論、これを書いてる自分も決して例外
ではない。
ここに出てくる人たちは多分どこにでもいる人たち、特別な存在ではない。この本で書かれているようなことは
日本の日常的な部分が持つ問題。どこにでもいつでも起こること。先日も"絶壁犬"がマスコミで取り上げら
れ、この犬を飼いたいとの声が全国からあがった。
ただ、センターに勤める獣医師を主人公にして小説風に書く形式にしたのはナゼなんだろう?


おすすめ度2(2006-09-10)
殺処分の現実を訴えた価値ある一冊ですが
この著者は「子猫殺し」のエッセイを発表した坂東氏を擁護する発言を週刊ポスト(06年9/8日号)で行っています。
責任感のない飼い主によって動物が保健所やセンターに持ち込まれて殺処分されることは非難出来るが、飼い主が責任を全うする為に自ら手を下すことは非難出来ないとのこと。
職員の「飼い主は責任放棄せず自分で殺したらどうか」という発言は、飼い主が自分で殺せということではなく、自分の手で殺すとなったら躊躇するだろうという趣旨であるのは一目瞭然です。
猫に避妊手術をすることに抵抗がある為に生まれたばかりの子猫を崖下に投げ捨てて殺し続けてきたという今回の件に対して、動物が大量に殺処分される現場をその目で見て取材した人物が怒りの声を上げずに擁護するというのは普通に考えれば激しく矛盾しています。
本当に動物を救いたい、この現状に警鐘を鳴らしたいと思って執筆したのなら今回のような擁護は決して出来ないはずです。
本書の内容は素晴らしい。けれど著者には『動物を救いたい』という気持ちは皆無だと言って良いでしょう。

殺処分の現状を理解するために本を買うならば、『動物を救いたい!』と本心から願っている人物が執筆した本を買うのが良いと私は思います。

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